障害者総合支援法による補装具費支給制度
難聴は日常生活や仕事の支障をきたすだけでなく、健康に及ぼす様々な影響が知られるようになり、早めに補聴器を装着して難聴に対処することの有用性が様々な場面で取り上げられています。しかしながら、補聴器は高度な技術が集積された精密電子機器で、国が定める技術基準に適合した医療機器でもあり、装着者各人の聴力に合わせて調整を行い、装着開始後も、度々再調整を行う必要があるため、補聴器を装着することは金銭的負担が大きくならざるを得ません。そのため、補聴器を装着することをためらってしまう方もいらっしゃいます。補聴器は公的医療保険でカバーされる医療機器ではありませんので、購入は全額自己負担が基本ですが、難聴の程度が一定の条件に合致すれば購入費用(補助金)が支給される制度がありますので、その内容について掲載しています。
身体障害福祉法と障害者総合支援法
補聴器購入に関係する法律には身体障害者福祉法と障害者総合支援法のふたつがあります。まず、身体障害者福祉法ですが、この法律には身体障害者の定義や行政上の責務についての基本的なことが定められており、身体障害者の定義は身体障害者手帳の交付を受けた人となります。一方、障害者総合支援法はどのような福祉サービスや公的助成が受けられるかを定められており、公的助成の一例として補装具費支給制度があります。難聴者の場合であれば、補聴器がこの補装具に該当します。聴覚の状態など一定の条件を満たせば、補聴器の購入にかかる費用のうち、原則9割を国や自治体で負担してもらうことができます(所得や自治体によって例外もあります)。障害者総合支援法で補聴器購入費の支給を受けられるのは身体障害者としての認定を受けて障害者手帳を交付された方だけですが、2014年以降は身体障害者手帳を所持していない場合でも軽度・中等度難聴児の言語能力の健全な発達を図るため、ほとんどの市町村で18歳未満(高校以下)の難聴児を対象に補聴器の購入費等の一部について補助を始めています。
補聴器購入費用(補助金)支給の流れ
障害者総合支援法による補聴器購入費用の支給を受けるには、身体障害者手帳を所持する必要があります。そこで、次に身体障害者手帳の取得方法から、補聴器購入費用支給の申請の流れ・手順を掲載しています。また、身体障害者手帳を所持していない場合でも購入補助(補助金)制度がありますので、『軽度・中等度難聴児への補聴器購入補助』を参考にして下さい。
身障者手帳の交付
交付手続きの流れ
手帳交付の対象になったとしても、自動的に障害者手帳が交付されるわけではありませんので、以下の手続きに従って手帳の交付を受けて下さい。
お住いの市町村の障害福祉担当窓口やインターネットのページから「身体障害者診断書・意見書」を入手します。
指定医の診察を受け、交付基準に該当する場合「身体障害者診断書・意見書」を記入してもらいます。診断書は有料となります。
STEP2で書いて貰った医師の診断書を添えて、お住いの市区町村の障害福祉担当窓口で申請手続きをします。
審査が行われ、結果が通知されます。
通知が届いたら、お住いの市区町村の障害福祉担当窓口で手帳を受領します。障害者手帳は各都道府県から発行されますが、お住いの市町村が手続きを代行しています。
身体障害者手帳の交付に必要な書類
お住いの市町村の障害福祉担当窓口への申請時に必要となる書類は以下のとおりです。
- 身体障害者診断書・意見書(指定医の診断)
- 交付申請書(窓口に設置されています)
- マイナンバーカード、運転免許証などの身元確認書類
- 写真(縦4cm×横3cm)
- 印鑑
補聴器の購入費用給付申請
補聴器の公費負担を受ける場合の条件
障害者総合支援法に基づいて補聴器の公費負担を受けられる条件は以下の2点です。
- 身体障害者手帳を持っている
- 補聴器購入前に申請する
補聴器の購入費用給付申請の流れ
お住いの市区町村の障害福祉担当窓口で『補装具費支給意見書』と『補聴器購入費給付申請書』を入手します。(自治体によって申請用紙の名称が異なります)
- 身体障害者手帳
- 印鑑
指定医に『補装具費支給意見書』と『補聴器購入費給付申請書』に必要事項を書いてもらいます。
- 補装具費支給意見書
- 補聴器購入費給付申請書
補聴器を取り扱っている店舗に『補装具費支給意見書』を提示し、補聴器の見積書を作成してもらいます。
- 補装具費支給意見書
- 補聴器購入費給付申請書
お住いの市区町村の障害福祉担当窓口へ、以下の書類提出を提出します。
- 補装具費支給意見書
- 補聴器給付申請書
- 補聴器の見積書
お住いの市区町村の障害福祉担当にて補聴器の購入費用給付の適否についての判定が行われます。
判定の結果、給付の許可が下りると『補装具費支給券』が自宅に届きます。
『補装具費支給券』と記載されている自己負担額のお金(自己負担額は原則1割負担です。ただし、所得によっては例外もあります。)と印鑑を持って店舗に行き、補聴器を購入して下さい。
補聴器販売店によっては手続きを代行してもらえる場合がありますので、相談してみましょう。
購入費用の給付を受けられる範囲
補聴器のタイプによって法律上の標準価格(補聴器購入基準価格)が決められています。補聴器につけるオプションの有無により、補聴器購入基準価格も変わります。その価格の1割を、購入者が原則負担することとなっています。ただし、生活保護や低所得者の場合、原則全額が公的助成となります。逆に所得が多い場合には、公的助成を受ける対象から外れることもありますので、詳細はお住いの市区町村の障害福祉担当窓口にご確認下さい。
補聴器購入基準価格表
名称 | 価格 | 基本構造 |
---|---|---|
重度難聴用 ポケット型 | 55,800円 | ① JIS C 5512―2000による90デシベル最大出力音圧のピーク値の表示値が140デシベル以上のもの。その他は高度難聴用ポケット型及び高度難聴用耳かけ型の①に準ずる。 ② JIS C 5512―2015による90デシベル入力最大出力音圧レベルの最大値(ピーク)の公称値が130デシベル以上のもの。その他は高度難聴用ポケット型及び高度難聴用耳かけ型の②に準ずる。 |
重度難聴用 耳かけ型 | 67,300円 | 同上 |
高度難聴用 ポケット型 | 41,600円 | ① JIS C 5512―2000による。90デシベル最大出力音圧のピーク値の表示値が140デシベル未満のもの。90デシベル最大出力音圧のピーク値が125デシベル以上に及ぶ場合は出力制限装置を付けること。 ② JIS C 5512―2015による。90デシベル入力最大出力音圧レベルの最大値(ピーク)の公称値が130デシベル未満のもの。90デシベル入力最大出力音圧レベルの最大値(ピーク)の公称値が120デシベル以上に及ぶ場合は出力制限装置をつけること。 |
高度難聴用 耳かけ型 | 43,900円 | 同上 |
耳あな型 (レディメイド) | 87,000円 | 高度難聴用ポケット型及び高度難聴用耳かけ型に準ずる。 ただし、オーダーメイドの出力制限装置は内蔵型を含むこと。 |
耳あな型 (オーダーメイド) | 137,000円 | 同上 |
骨導式ポケット型 | 70,100円 | IEC 60118―9(1985)による。90デシベル最大フォースレベルの 表示値が110デシベル以上のもの。 |
骨導式眼鏡型 | 120,000円 | 同上 |
なお、基準価格を上回る価格の補聴器を希望する場合には、差額自己負担で購入することを認めている自治体もありますので、お住いの市区町村の障害福祉担当窓口に相談して下さい。
軽度・中等度難聴児への補聴器購入補助
補聴器購入補助(補助金制度)の内容
軽度・中等度難聴児への補聴器購入補助については、身体障害者手帳を所持していない場合でも軽度・中等度難聴児の言語能力の健全な発達を図るため、18歳未満(高校以下)の難聴児を対象に補聴器の購入費等の一部を補助しています。
条件の概要
- 補助を実施している市町村に住んでいること
- 18歳に達する日以降の最初の3月31日までの間にあること
- 両耳の聴覚レベルが、原則として30デシベル以上70デシベル未満であり、障害者総合支援法の補装具費支給の対象とならないこと(身体障害者手帳の交付対象外の児童)
- 補聴器の装用により、言語の習得等一定の効果が期待できると、意見書により指定医師が装用の必要性を認めた児童であること
- 対象児の属する世帯構成員の中に、市民税の所得割が46万円以上課税されている者がいないこと
補助金額の概要
ほとんどの市町村で基準額の範囲内の3分の2(3分の1を市町村、3分の1を都道府県が負担している場合が多いようです)を補助してもらえるような制度になっていますが、中には9割補助を打ち出している市町村もありますので、お住いの市町村で確認して下さい。
都道府県別の補聴器購入補助情報
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茨城県 | 栃木県 | 群馬県 | 埼玉県 | 千葉県 | 東京都 | 神奈川県 |
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都道府県がホームページに補助情報を掲載していない場合は代表となる市町村の情報をリンクしています。